不確実な時代を生き抜く骨太でサステナブルな運営スタイルとは
平成から令和に変わった翌年、中国の武漢から発生したとされる新型コロナウイルスが世界中に広がり、誰もが経験したことのない未曾有の事態となりました。日本でも一時、緊急事態宣言が発せられ自粛に伴い多くのビジネスが打撃に合いました。中でも移動や人が密集しやすい「飲食」「旅行」などの業界が大きなダメージを受けました。当然ゴルフ業界、特にゴルフ場経営はこれら二つの種の両面特徴を持ち合わせており、目の前のコロナ対応に迫られるだけでなく、今後の経営方針に頭を悩ませる経営者は多いことと思います。
しかしながら、この一連の中で生まれた新たなライフスタイルはプレースタイルの変化、プレーヤーの意識の変化を起こし、それが今後のゴルフ場経営を“サステナブル”なものにする鍵を握っているのかもしれません。
ゴルフプレーヤーの高齢化に伴うプレー人口の減少は以前より大きな課題でした。今、このような事態の中で、今後10年、20年と生き残って行くゴルフ場経営像が見えて来ています。
コロナ対策が生んだ意外な副産物
ゴルフ場は、プレーヤーの感染リスクを抑えるために様々な対策の必要に迫られました。「三密」を避けるためクラブハウスへの出入りを最小限に抑えると共にロッカー、シャワールーム、浴室の使用禁止、レストランの閉鎖。また来場者の検温や手の消毒、マスク着用のお願い、カートやその他手に触れる物に対する消毒など多岐に渡ります。 このような対策を施す中、ゴルフ場経営的観点から“苦肉の策”と目される「スループレー」の導入を“新たに”行ったゴルフコースも非常に多くあります。一見プレーヤーに不便をかける上での処置と考えている経営者も多くいると思われますが、プレーヤー目線ではスループレーが可能になったことで
- 「時間を有効的に使えて良い」
- 「気軽に回れて良い」
との声が聞こえ始めており、今までコースに来なかった層、特に若い世代のプレーヤーが来場するケースが目立ってきています。
COVID-19により
ゴルフ場での三密を避けるため
- 密集する場所を少なく
- 密集する時間を短く
- 接客機会を少なく
行った対策 | 具体的な内容 | 結果 |
---|---|---|
クラブハウス利用制限 | 昼食休憩無し | 低価格化 |
パーティ無し | ||
ロッカー無し | ||
お風呂無し | ||
簡素化 | 事前精算(前払い制) | |
バッグ積み込みは自分で | ||
プレースタイルの変化 | スループレー | プレースタイルの多様化 |
早朝スルー | ||
ハーフプレーなど | ||
2サムの積極的受け入れ | ||
1人プレーの受け入れ |
「参加しやすさ」を生み出す
- 密集する場所を少なく
- 密集する時間を短く
- 接客機会を少なく
既にコロナ以前からの...働き方改革、ライフスタイルの変化
コロナ禍はテレワークの増大などを始め「ライフスタイル」にも大きな変化をもたらしました。そのどれもが一年前までは思いもよらなかったことです。しかしながらこの流れは以前から始まっており、コロナ禍を機に一気にクローズアップされ、変化が加速したと言うのが実態です。働き方改革の元、リモートで出来る業種は従来より既にリモート業務を推進しており、通勤時間がなくなることで各個人がそれぞれ時間を有効的に使うライフスタイルが広がって来ていました。また通勤が少なくなる為、家賃がより安く静かに過ごせる郊外に引っ越す動きも見られています。注目すべきはこれらの動きは特に若い企業、若い世代で顕著に見られ、ゴルフ業界がユーザー層を広げたい層と重なります。
またゴルフ場は野外の広いスペースで適切な距離を保って行うスポーツです。密集しやすい他のレジャーよりコロナウイルスの感染リスクが少ないこと、自粛での運動不足解消からしばらく離れていたプレーヤーが戻ったり、ほかのレジャーから転向し、新たにゴルフを始める人が増加するなど、混雑している練習場に行くよりサッとコースに行く方が良いとの現象が見られています。これは今後、コロナ禍が長引いた際やライフスタイルの変化が続く中、新たなプレーヤー獲得の大きなチャンスとなります。
テレワークが増加し、時間の使い方が大きく変化
通勤時間が無くなり、自由に使える時間が一気に増加。例えば、片道1時間かけて通勤していた場合、1日当たり2時間も自由に使える時間が増えます。テレワークが定着化した企業に勤める人の中では、都会から郊外に居を移す人たちも増えて来ています。
勤務、休日のスタイルの変化
勤務時間の多様化だけでなく、休日の分散化も予測され、平日、休日の概念がライフスタイルの変化によって多様化して行きます。
一方収入の伸び鈍化も
企業の減収が、減給へとつながり、より効果的な出費を考えるようになり個人レベルでのワイズスペンディングが必要となります。
ステイホーム・屋内活動の制限
テレワークによる運動不足、屋内活動の制限によるストレスにより、「身体を動かしたい、でも屋外で!安全に!」という人々が増えるでしょう。
「働き方改革は休み方改革」で生まれた新しいライフスタイル
- 千葉市在住新宿勤務のゴルファーのケース、テレワークならば始業前に早朝プレーを行うことさえも可能に。
- リゾートに宿泊し、テレワークで現地から。勤務時間開始前にゴルフを。
- テレワークに伴って、都心から2時間圏に移住することに。趣味のゴルフを存分に楽しむため、メンバーシップを持つゴルフ場の近隣に住居を構える。
- 収入が減少したため、居住地を郊外へと移動した。
- 三密回避の分散休暇にともなって、休日の分散化が進み、ピークを避けたレジャーが一般的に。
- 趣味として屋内スポーツを楽しんでいたが、コロナ禍のため、屋外スポーツを選択。
プレーヤーの高年齢化を乗り切る最後のチャンス
この様なライフスタイルの変化で生まれた時間を使うにあたりゴルフは非常に最適なレジャーであることが見直され、業界全体が 抱えている課題であるユーザーの若返り、新たなユーザー獲得のチャンスが目の前に来ていると言えます。
スループレー導入をこのまま継続すべきか?
スループレーの導入で新たなプレーヤー、若い世代の顧客獲得と言う思わぬ副産物が見られました。以前からスループレーを導入していたコースは当然ながら、 このコロナ禍においてスループレーを導入した多くのコースオーナーは今後もこれを継続するのか、元に戻すのか頭を悩ませているものと思われます。
今回実施した対策により、新しいゴルファーが来場し始めている場合、継続することをおすすめします。
コロナ禍において起きた現象は一過性の物ではなく、ライフスタイル、働き方、休日の変化など潜在的に起きていたことが更にクローズアップされ、顕在化したにすぎません。
10年後を見据えた変化に対応する具体的対策とは?
ゴルフ業界全体を悩ませていた新規プレーヤー、プレーヤー層の若返りのチャンスが目の前に来ています。
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